ブランド設立の前はどのような活動をされていたのかお聞かせください。

映像制作をメインに、現在もファッション媒体で活動していますが、いつかは自分の表現をしてみたいとずっと思っていました。そこで、SONATINEのもう一人と出会った時に、「この人となら、二人でクリエイションをしてみたい」と思って、その何年後かには自然と始めていたといった流れです。

設立から現在、あるいはこれから先も一貫して大切にしていることはありますか?

二人の嗜好の塊でしかありません(笑)。仕事として捉えておらず、直感でやるこの楽しさを一番大事にしていきたいです。そして、表現の幅を広げる事に常に挑戦していくことです。

ファッションを好きになった一番はじめの記憶はなんですか?

7歳の時に使えなくなった靴下や下着を捨てることがもったいなく思い、ドールやぬいぐるみ用に洋服を作り、自宅や友人宅で人形のランウェイをしていました。思えば、ファッションに対しての興味ではなく、物作りに対しての興味が強かったのではないかと思っています。今現在でも私たちがファッションデザイナーという自負はありません。あくまで、表現者としての活動をしています。

自身にとってのヒーローやミューズはいますか?

ヒーローというよりかは、道標、目標となる人物は寺山修司です。彼はマルチプレイヤーであり、歌人、劇作家、詩人、俳人、映画監督、脚本家、作詞家、評論家といった様々な面を持っています。その活動の中で、日本中の迷い悩む若者に手を伸ばし、道を作った人です。私は18歳で上京した後に、彼の作品と向き合いました。もっと早く出会っていれば私の人生は大きく変わっていたかもしれないと、今でも思う後悔の一つでもあります。もし彼がこのテクノロジーの時代に生きていたら、果たしてどのような表現をしていたのだろうかと考えることで、この先の時代のヒントにもなりそうです。

ブランドの洋服に袖を通す方々と洋服を介した対話ができるとして、コレクションから感じてほしいこと、思い、メッセージなどはどんなことが挙げられますか? また、ファッションデザイナーとして幸せを感じる瞬間はどのようなときですか?

世間の評価や反応を気にせず、自分のアンテナを信じて「探し、見つけ、試す」といった行為を伝えたいです。この感覚は私たちも常日頃意識していることでもあります。私たちはすべて手作業で製作をしています。そのため一つのパーツでしかないものを作品として仕上げることに対して幸せを感じます。

激動の2020年に制作が進められた2021S/Sコレクションにおいて、特に力を注いだことをお聞かせください。

私たちはコレクションブランドではないので「今までと変わらない」が本音です。作品一つひとつ平等に情熱を注いでいます。激動の中であっても作ることはやはり楽しいと再確認しました。

差し支えなければ、2021S/Sの制作中に触れた本、漫画、写真集、映画やドラマ、音楽などを教えてください。

たくさんありすぎて答えきれないのでピックアップします。
ドラマだと『ケイゾク』
映画だと『MIDNIGHT SWAN』
音楽だと、MOSES SUMNEY
アニメだと『装甲騎兵ボトムズ』
本だと、アルフレッド・クビンの『The Other Side』
漫画だと『特攻の拓』

今回のために制作を手掛けられたアートワークと一点もののアイテムについてご解説ください。

今回は時間をテーマにしています。一日の中の1時間(24時間分)を考えて24の個作品を作成しました。SONATINEの作品は、常に自分たちの生活に直結するような物作りを心掛けています。

ちょっとだけ寄り道をさせてください。もしも、タイムマシンがあって、一度だけ、どの時代にも、どの場所にでも行くことができるとしたら、どこのどんな場面に向かいますか? 1000年前でも、100年後でもかまいません。

年月はわかりませんが “地球の終わり” を見たいです。

周囲には、一世代二世代上で活躍するデザイナーズブランドの歩みを近しいところでみてきていると思います。今後、ご自身の「未来」にどんなことを期待していますか?

ブランドが挑戦していく中で東京、ミラノ、ロンドン、パリなど、各々ステップを踏んで表現の場を広げていくことが諸先輩方の姿であると思いますが、私達はそのような未来を目指しておりません。表現の場所、方法はこれからもっとたくさんの選択肢が出てくるかと思います。既存の文化、歴史に背くわけではないのですが、常に新しい方法を見つけていける未来に期待をしています。確定的な目標を持つより、流れに適応できる柔軟性と私たちのクリエイションの主軸を大切にしています。