ブランド設立の前はどのような活動をされていたのかお聞かせください。
KIDILLの前進のブランドを10年間やっていました。それを一度終了させ、2014年からKIDILLをスタート。自分の好きな音楽やアート、影響を受けたユースカルチャーなどに深くフォーカスした服を作り始めようと思いました。
設立から現在、あるいはこれから先も一貫して大切にしていることはありますか?
自分だけにしか作れない服って絶対にあると思うので、そこを追求していきたいです。作った服を、何年後かに見ても自分に嘘をついてないと思えるようにしたいです。
ファッションを好きになった一番はじめの記憶はなんですか?
80年代後半〜90年代初頭にかけてロンドンのアンダーグラウンドシーンで名を馳せたHOUSE OF BEAUTY AND CULTUREがやっていたクリエーションが好きです。18歳の時にシューズデザイナーのジョン・ムーアの作品を見たときに、物凄い衝撃を受けたことを覚えてます。「これが靴なのか!」と。ファッションが好きになったきっかけだっかもしれません。ジュディ・ブレイムやクリストファー・ネメスの作品は現在も好きで、そういったデザイナーたちの影響を受けてると思います。ちなみに、高校生、専門学校生の頃は、Vivienn WestwoodやChristopher Nemethとかよく着てました。バイト代を全額叩いて狂ったように毎月買ってましたね。
自身にとってのヒーローやミューズはいますか?
Judy Blame、Jamie Reid、Malcolm McLaren、John Lydon、岡本太郎、川久保玲、Rita Ackermann、Chapman Brothers、Cindy Sherman、大野一雄、灰野敬二、Larry Clark、坂本慎太郎、HR Giger、Marilyn Manson、Mike Kelley、Ed Gein、Oskar Schlemmer、Joel Peter Witkin...... まだまだ書き足りないほど沢山いすぎて、自分のヒーローをあげるとキリがなくて終わりません。
ブランドの洋服に袖を通す方々と洋服を介した対話ができるとして、コレクションから感じてほしいこと、思い、メッセージなどはどんなことが挙げられますか? また、ファッションデザイナーとして幸せを感じる瞬間はどのようなときですか?
それぞれが自由に着て感じてもらえれば良いかなと思ってます。服を作る時は、毎回が試行錯誤の連続だし、一人きりで生み出していくことになるので、誰に話すこともなくすべての判断が自分だけになり、孤独との勝負になってくる。幸せを感じることもあまりありませんというのが本音ですね。良いデザインが閃かずに寝れないことも多いです。自分でデザインから生産管理、すべての打ち合わせまで行ってるので、時間に追われてる毎日です。半年毎に新しいコレクションを作らねばいけないというプレッシャーも半端ないですし。その中から良いものが作れた時が一番幸せなのかもしれません。
激動の2020年に制作が進められた2021S/Sコレクションにおいて、特に力を注いだことをお聞かせください。
ウィンストン・スミスとのコラボレーションが軸になります。彼とのやりとりで発見した事や、来シーズンに自分がやるべきことなどの“道”が見えたような気がします。世界がこういった状況に一変したので、自分がやるべきことも明確になってきたような気がしてます。ウィンストン・スミスのアートは、アメリカのハードコアシーンでは目を見張るものがあり、多くの人を惹きつけてます。80年代から第一線で活躍するレジェンドとずっと一緒にやってみたかったので、今回の21S/Sでのコラボレーションの取り組みはずっと残り続ける作品になると思います。彼と仲良くなれたし、純粋に嬉しかったです。
差し支えなければ、2021S/Sの制作中に触れた本、漫画、写真集、映画やドラマ、音楽などを教えてください。
では、漫画しばりでお伝えします。『キングダム』『刃牙道』『チェンソーマン』『鬼滅の刃』『GIGANT』『州アヘンスクワッド』『1日外出録ハンチョウ』『無法島』『寄生列島』
今回のために制作を手掛けられたアートワークと一点もののアイテムについてご解説ください。
仲の良いフォトグラファーの服部恭平に、KIDILLの服を使って、自由に、好きに撮影してほしいと伝えました。僕と年代は違うんですが、彼の持ってる感性や生き様だとか、感覚的にも理解できる部分を多く感じるので、服部恭平の感性でKIDILLっていうものをポラロイドで表現してもらうことにしました。限定で作った服は、不良の特攻服みたいな感じにしました。
19A/Wで即完したアイテムをベースに、特別カスタムしたシャツになってます。残念なお知らせですが、これを着て歩いてたら女子にはモテないと思いますよ。
ちょっとだけ寄り道をさせてください。もしも、タイムマシンがあって、一度だけ、どの時代にも、どの場所にでも行くことができるとしたら、どこのどんな場面に向かいますか? 1000年前でも、100年後でもかまいません。
500年後くらいに行ってみたいですね。人類が想像できないくらい進化してるか、退化してる気がするので、もしかすると、地球が無くなってるのかもしれないし。500年後の東京で一番美味いと言われるスウィーツを食べにきたいですよ。スウィーツ食べ歩きツアーですね。ドラえもんにお願いしてタイムスリップしてみたいですね!
都市と人は、さまざまなカルチャーを生み、育む力があると思います。いま、東京という街にあるエネルギーや活力について、どのように捉えていらっしゃるか率直なご意見を聞かせてください。
東京にいようが、ロンドンにいようが、ベルリンにいようが、個人が何かを強烈に欲求したり、何者かになってやるという欲望は、強烈なパワーになってその人の個性を作ると思うので、いつの時代も爆発力のある東京であってほしいです。東京のカルチャーもそういった強烈なパワーから生まれると思う。僕はファッションデザイナーで何ができるのかわかりませんが、自分が前に進み、恐れずにやり切ること、それが自分の未来を作り他者へのエネルギーにも繋がっていくと信じてます。