ブランド設立の前はどのような活動をされていたのかお聞かせください。

ブランド始める前は、服飾の学校に通っていました。Asia Fashion Collectionのグランプリをいただいて、ニューヨークファッションウィークでファッションショーを行いました。以降もすごくブランドを続けたいと思う一方で、このままブランドをスタートしていいのかと悩んでもいました。機会に恵まれたことを人生経験として生かせるのではないかと思い至って、卒業後に正式にブランドとして設立させ、思いがけずシーズンを重ねながら、今に至るという感じです。

設立から現在、あるいはこれから先も一貫して大切にしていることはありますか?

家族愛を大切にしてます。どのシーズンも家族の1人をテーマにし、経験してきたことや思い出に残っていること、その人の性格や仕事といったさまざまな部分から要素を抜き出し、何かしらのストーリーを描いてからデザインしています。また、その時の、その人に対する感情をカラーにして表現することもブランドの強みだと思ってます。この2つはぶれてはいけないものだと思ってます。

ファッションを好きになった一番はじめの記憶はなんですか?

忘れっぽいので、いつ好きになったのか忘れてしまいました(笑)。でも、本当に好きだなって思い始めた時に出会ったブランドは、Acne StudiosとDries Van Notenです。自分のブランドをプライベートで着ないんですけど、この2つは今でも衝動買いしちゃいます。

自身にとってのヒーローやミューズはいますか?

これからも、答えはずっと1つです。家族です。家族、皆1人ひとりがヒーローでもあり、ミューズにもなりうる存在です。今でもみんなに支えられてブランドが少しずつ成長できてきていると思ってます。僕にとって1人1人個性のあるアベンジャーズです(笑)。

ブランドの洋服に袖を通す方々と洋服を介した対話ができるとして、コレクションから感じてほしいこと、思い、メッセージなどはどんなことが挙げられますか? また、ファッションデザイナーとして幸せを感じる瞬間はどのようなときですか?

まだまだ僕のブランドを知ってくれている方は少ないと思いますが、デートだとか、何気ない日常で着てもらって、幸せになってもらえれば僕も幸せな気持ちになります。

激動の2020年に制作が進められた2021S/Sコレクションにおいて、特に力を注いだことをお聞かせください。

今季はコロナ禍で僕が感じたことをストレートに表現しています。ブランドを見てくれている方に届けられることを届けたいなと思い、「Dear」と名付けました。医療現場やステイホームの様子を、撮影メンバーと力を合わせて作り上げた写真に1番力を注ぎました。ディレクターのKURONOさんとはいつも、10回以上打ち合わせしています。本当に人に恵まれてるなと常々思いますし、恩返しをしながら自分のブランドを作っていくことは変えていきたくないなと思います。

差し支えなければ、2021S/Sの制作中に触れた本、漫画、写真集、映画やドラマ、音楽などを教えてください。

映画をすごく観ました。もろに影響を受けた映画が『Call Me By Your Name(君の名前で僕を呼んで)』です。観ていて、心地いい映画です。もう 20回は超えましたね。

今回のために制作を手掛けられたアートワークと一点もののアイテムについてご解説ください。

アートワークは、これまで撮影してきたものを写真集風にお見せできたらなと思ってます。また、一点ものはサスティナブルをテーマにし、kenichi.の定番のテーラードを、余った生地を活用した商品です。

ちょっとだけ寄り道をさせてください。もしも、タイムマシンがあって、一度だけ、どの時代にも、どの場所にでも行くことができるとしたら、どこのどんな場面に向かいますか? 1000年前でも、100年後でもかまいません。

20年後に行きたいです。僕が何をしているのか見てみたいです。見てみて、直せることを発見して、現在の世界に戻ってうまくいく方法を見つけたいです。でも、今それよりもほしいのはどこでもドア。移動する手間を1番削減したいですね(笑)。

在学中より、海外に対する憧れは学生の頃からあったのでしょうか? 現在は東京を拠点としていますが、将来コレクションを発表したいと思う国や都市はあれば、あわせて伺いたいです。

海外に行く時は、ショーをする時だと考えてはいたんですけど、まさか本当に行けるとは思っていなかったのでNYに行くことが決まった時はすごく嬉しかったです。パリで展示会はもちろん、ショーもできるようなブランドになりたいとは思っていますが、まずは東京でのショーの開催を目標に頑張ります。