ブランド設立の前はどのような活動をされていたのかお聞かせください。

自分のブランドを持ちたいと最初に思ったのは15歳の時で、当時没頭していたサッカーというものが自分の視野を狭めているのではないかと思春期ながら思っていたタイミングでした。それを痛感したのがコーチから言われた「君よりひとまわり私は歳をとっているから、言うことを聞きなさい」という言葉でした。もちろんサッカーは好きだけど、プロにはなれないだろうとリアルに感じ始めたこともあって、スパッとやめ、気になっていた “ファッションデザイン” という職業を調べたり、書店でカッコつけて洋雑誌を読んだりし始めました。学校にいながら、もしくは学校を卒業してすぐにブランドを立ち上げる方々もいますが、私は自分のクリエイションにそこまで自信がなかったので、ドメスティックブランドにアシスタントとして就職して “何でも屋さん” を6年弱担当しました。本当に色々な体験をさせていただきました。
「自分がブランドをやるとどのようになるのか?」という好奇心が強くなったタイミングで、ブランドのスタートを本気で思い始めました。思い立ってすぐに当時の上司にお伝えし、自身のブランドを2020年よりスタートいたしました。

設立から現在、あるいはこれから先も一貫して大切にしていることはありますか?

ブランド設立から1年しか経ってないので “一貫して大切にしている” と証明できないのですが...... クリエイションに対して正直に向き合うことです。関わっていく方々、すべての人に正直な意見をお伝えし、相手の正直な意見も言っていただく、そうした人と人のコミュニケーションがCOGNOMEN=愛称をつけたくなるほど愛着のわく服作りに繋がると思っております。これは私が他人よりも少しだけ人を見る性分が影響している、と思います。

ファッションを好きになった一番はじめの記憶はなんですか?

繰り返しになってしまうのですが、15歳の時です。当時やんちゃな部分もあって、チームから1ヶ月間の謹慎を喰らった事がありまして「放課後にすることが無いな〜」と思ってボーッとしていたら、親から何か最近服装気にしてるんだったらデザイン画でも書いてみたらって言われたんです。めちゃくちゃ下手くそなデザイン画を親に褒められたのがスタートですね。たしか、黒と赤の組紐ポロにフレアのパンツにとんがりブーツ...... 超絶お兄系ファッション...... というデザイン画が私の記念すべきデザイン画第一号です。

自身にとってのヒーローやミューズはいますか?

ヒーローやミューズまではいかないですが、ヨハン・クライフというサッカー選手、引退後は監督として活躍した方を尊敬してます。オランダで初めてサッカー選手のための年金制度を作ったり、組織的なサッカーの基盤を作ったり、とても賢い部分もありますが、その反面、ハーフタイムでもタバコを吸ってしまうほどのへビースモーカーだったり家族を守るために1978年のワールドカップを欠場するような人間らしい部分がある、彼の生き方はとても正直で、素晴らしいと思っております。残念ながら数年前に亡くなりましたが、彼が作った組織的なサッカーは現代サッカーの基盤として今も受け継がれています。

ブランドの洋服に袖を通す方々と洋服を介した対話ができるとして、コレクションから感じてほしいこと、思い、メッセージなどはどんなことが挙げられますか? また、ファッションデザイナーとして幸せを感じる瞬間はどのようなときですか?

“自分” を感じてほしいですね。全アイテム、リリースでは伝えきれていない部分があるので、そこを自分なりに感じ取ってくれたら嬉しいです。COGNOMENを自分なりの解釈で着用してくれて、それによって着ている方が自分を全肯定できるような一着になれたら、この上ない喜びです。

激動の2020年に制作が進められた2021S/Sコレクションにおいて、特に力を注いだことをお聞かせください。

オリジナルで開発した浮き出る編地のポリエステルのニットが一番思い出深いです。クリエイションとは少し離れるのですが、ファーストシーズンでも違った形で発表した技術だったのですが、セカンドシーズンの際にサンプル製作を工場さんの間に入っていた会社に断られました。すごい悔しくて、でも諦めきれなかったので、この編み地を一緒に考えた職人さんを引き抜いて昔からお世話になっている東京のニット工場さんとコネクトしました。その職人さんがいないとこの浮き出るニットは完成しないため、お互いリスクを取って形になりました。思い切るってとても大事だと思います。世の中的には激動の2020年でしたが、私は今年からコレクションを発表しているので、変わる/変わらないではなく、“こういう もんだな” という普遍的な事実として2020年という1年を身体で感じております。

差し支えなければ、2021S/Sの制作中に触れた本、漫画、写真集、映画やドラマ、音楽などを教えてください。

本:『The Football Shirts Book』『ULTIMATE FOOTBALL』
音楽:Chicano Batman
写真集:『CIMARRON』
あとは、タリボ・ウェストという90年代後半〜2000年前半に活躍したナイジェリアのサッカー選手の髪型をひたすら調べていました。ユニフォームカラーに合わせたり、絶妙なバランス感がかっこいいです。

今回のために制作を手掛けられたアートワークと一点もののアイテムについてご解説ください。

このオファーをいただいた当日に考えました。Sakas PRさんと初めての取り組みなので、カタチはCOGNOMENの初コレクション(20A/W)のアイテムから選びました。自分にとって、ど真ん中の色ってみなさんお持ちだと思うのですが、天気や気分、好きな人の影響とかで選ぶ色って日々変わりますよね。ということで、一点ものの付け襟を色々な配色で作りました。着ているうちに縦糸がほつれてくるので、配色になっている横糸が日を重ねることによって主張してくる...... そうして色の変化を楽しめる物になっております。

ちょっとだけ寄り道をさせてください。もしも、タイムマシンがあって、一度だけ、どの時代にも、どの場所にでも行くことができるとしたら、どこのどんな場面に向かいますか? 1000年前でも、100年後でもかまいません。

人類誕生の経緯を凝縮してもらった空間を作ってもらって、周りのみんなとそこの空間に入らせていただきたいです。

多くの国々の文化に触れてきた中で、もっとも影響を受けたとご自身が感じている国や都市はどこですか?

これ、超むずいです。自分の容姿を客観的に見ることがキッカケになったのは小・中学生の時にサッカーで回った日本全国各地。まだハーフとという人種が遠征先によっては珍しかったので必然的に考えるようになりました。色だと、高校時代に留学したブラジル。混血国家なので、南から北、色んな色を見ることができます。妙な居心地の良さと悪さ、両方を感じるのは家族で何度も行ったイギリス。
毎年イギリス・ケント州に家族で帰省していたのですが、住んだことはありません。自分にとってリアルでもあるし、想像しないと行き着けない国はイギリスだけなので、デザインする時によくその感覚を活用することがあります。安心するのは、生まれ育った東京です。でも、23区外育ちなので東京を斜めに見ることが多いと思います。早く不自由なく旅ができる日が来ることを願っております!