ブランド設立の前はどのような活動をされていたのかお聞かせください。
設立前は某コレクションブランドでパタンナーをしていました。洋服と向き合って制作作業を続けていく中、自分自信の洋服に対する向き合い方と、当時在籍していたブランドの社風が徐々にズレていくのを自覚してしまって、とりあえず、退社を決めました。
その頃に体感した “ズレ感” を基軸にAzuma.を始めました。
設立から現在、あるいはこれから先も一貫して大切にしていることはありますか?
一貫していることは “優等生なもの” を作らないことです。デザイナーズブランドが面白いわけは、デザイナー自身のアイデンティティーを皆さんが受け入れてくれるところだと思います。僕は学生時代からそうですが、いわゆる “ひねくれ者” です。それがAzuma.にうつりこんでいくわけで、アイデンティティーを活かしたものづくりこそが本物だと信じています。
ファッションを好きになった一番はじめの記憶はなんですか?
ファッションというか、鮮明に服が脳裏に焼き付いているのは小学生低学年の頃です。熱心な仏教徒の祖母に連れられ、よくお遍路さん(四国八十八箇所巡り)に同行していました。彼らの住職の服装には、ファッション性ではない強さを感じました。“飾る” という意味でのファッションにはほとんど興味がありません。それはブランドコンセプトとも繋がっているので、この職業に就いたことに影響していると思います。
自身にとってのヒーローやミューズはいますか?
自分の生き方を貫いている方に、魅力を感じます。Azuma.の服はクセが強いとよく言われますが、どんな職業の方でも、生き方そのものに一本気のある方にはなぜか似合います。逆に、実際に会ったことのないミュージシャンや芸能人にブランドとして魅力を感じることは一切ありません。飾る道具として使用された時は悲しくさえあります。
ブランドの洋服に袖を通す方々と洋服を介した対話ができるとして、コレクションから感じてほしいこと、思い、メッセージなどはどんなことが挙げられますか? また、ファッションデザイナーとして幸せを感じる瞬間はどのようなときですか?
服は道具だけど、着飾る道具じゃない。自身の魅力があって、より魅力的に見えるものだと思います。特に、若い世代には自分の生き方を見つけてほしいと思うことが多々あります。自分の企画を、職人さんを始め多くの方々にご協力いただき実現できた時に幸せを感じます。
激動の2020年に制作が進められた2021S/Sコレクションにおいて、特に力を注いだことをお聞かせください。
21S/Sはブルーハーツがテーマだったのですが、コスプレにならないようにする点は気をつけました。コロナ禍で作風に影響はありませんが、アウトプットをこれまで以上に強く、わかりやすくしなくてはいけないという思いはありました。プレゼンテーション兼映像としたのも、そのためです。
差し支えなければ、2021S/Sの制作中に触れた本、漫画、写真集、映画やドラマ、音楽などを教えてください。
ブールーハーツの作品というよりは、真島昌利のソロ作品に影響をかなり受けています。
今回のために制作を手掛けられたアートワークと一点もののアイテムについてご解説ください。
洋服関連のものをアートというのは嫌いなのですが、21S/Sの前に自分用に趣味で作ったグラフィックです。実際に販売もしていません。一点ものの洋服に関しては、特に関連性を持たせてはいません。
ちょっとだけ寄り道をさせてください。もしも、タイムマシンがあって、一度だけ、どの時代にも、どの場所にでも行くことができるとしたら、どこのどんな場面に向かいますか? 1000年前でも、100年後でもかまいません。
洋服は関係ありませんが、1867年12月10日の近江屋に行きたいです。
2021S/Sで初のインスタレーションを行いました。今季のコレクションを境に、ご自身の中でもっとも変化を感じていることを具体的にお聞かせください。
失礼にあたるかもしれませんが、包み隠さず答えます。「みんなミーハーだな」と。服の評価よりも “ショーをやったブランド” としてみんな褒めてくれるわけですが、ずっと12シーズンやってきたことなので「今さらかよ」と。もっとブランドの世界観を認知していただけるように頑張ります。