ブランド設立の前はどのような活動をされていたのかお聞かせください。

2015年、大学卒業と同時にMIHARAYASUHIROを運営するソスウインターナショナルに入社。同年から2018年までの3年間、MYneのディレクターを務め、2018年10月に独立し、2019S/Sシーズンよりデザイナー、ディレクターとしてADANSを立ち上げました。
学生時代から社長になるのが目標で、結局どんな肩書きのもとでものづくりをしても、自分に権利がない限り自分のモノにはならないと考えていました。会社に所属していると、ディレクターやデザイナーであっても社員の1人であることに変わらない。だから自分で会社とブランドを立ち上げました。

設立から現在、あるいはこれから先も一貫して大切にしていることはありますか?

社会や常識に対するアンチテーゼは、ものづくりをする上で一貫して大切にしたいと思っています。その対象は人生のいろんな経験やステップによって変わるだろうけど、根本的な思想は変わらないのかなと思います。あと、独立して感じたことですが、仕事でもプライベートでも好きな人と楽しいことだけして生きていきたいです。これから先たくさんの人がそういうライフスタイルで生きていけることができたらいいなと思います。

ファッションを好きになった一番はじめの記憶はなんですか?

自分なりにしっかりとファッションに興味を持って、ブランドについて調べて着始めたのは名古屋の大学に進学してから。とにかく目立つことが好きだったんで、入学式に髪をピンクにしていったんですよ。それで大学のファッションサークルの人たちに勧誘され、おしゃれな人がたくさんいる空間に行ったことがなかったのでカルチャーショックを受けたんです。なんか、いいなって。インカレサークルで300人とか集まる規模感で、服飾について学ぶわけじゃなく、服好きが交流することが主旨でした。今思っても本当に変な人が多かったですね。自分の人生は基本いきあたりばったりなので、デザイナーになったのも、その例外ではないです。

自身にとってのヒーローやミューズはいますか?

あまり特定の人に熱烈的に尊敬することはないので、特にいないですが、世界を動かしてきた人々はみんなすごいなと思います。

ブランドの洋服に袖を通す方々と洋服を介した対話ができるとして、コレクションから感じてほしいこと、思い、メッセージなどはどんなことが挙げられますか? また、ファッションデザイナーとして幸せを感じる瞬間はどのようなときですか?

受け取り方は人によって違っていいので、こちらから感じて欲しいというよりは勝手に想像して解釈してもらえるのが理想ですが、強いて言うなら楽しんでほしいですね。せっかく作ったので。頭の中にあるイメージを立体物として具現化できるのは楽しいポイントだと思います。

激動の2020年に制作が進められた2021S/Sコレクションにおいて、特に力を注いだことをお聞かせください。

今回は、特に楽しいイメージや遊び心をいつもより意識して作りました。ハンドペイントの落書きジャケットなんかは自分で書いたりして。こんな時代だからこそ何事も楽しむことが大切で、服を買ってくれる人にはもちろん服を通して楽しんでほしいし、自分もものづくりを楽しむことが大切だなと改めて感じた2020年だったと思います。

差し支えなければ、2021S/Sの制作中に触れた本、漫画、写真集、映画やドラマ、音楽などを教えてください。

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今回のために制作を手掛けられたアートワークと一点もののアイテムについてご解説ください。

リモートワークなど、オンラインとオフラインの行き来や境界が曖昧になる中で、紙や洋服というオフラインの媒体に、オンラインのデザインを乗せることで仮想と現実のはざまにある現代の違和感を表現できたらと思って作りました。

ちょっとだけ寄り道をさせてください。もしも、タイムマシンがあって、一度だけ、どの時代にも、どの場所にでも行くことができるとしたら、どこのどんな場面に向かいますか? 1000年前でも、100年後でもかまいません。

一度だけってことは戻ってこれないってことですか? もし戻って来れないなら、行かないです。戻って来れるなら20年後の東京に行ってみて情報を持って帰って、現代で当たるビジネスやります(笑)。

学生時代から自立願望が高かったとうかがっていますが、当時からご自身の強みとしてきたことはなんですか? それは、ファッションの世界に足を踏み入れてからも活かせましたか?

今振り返って思うと、圧倒的に我が強かったこと、成長するために貪欲だったことかなと思います。ファッションやクリエイティブのセンスなんて生まれつき持っているだとか、優劣なんて別にないと思っています。少なくとも自分にはなかったと思うし、ブランドディレクターになったのもセンスが良くてではなかったと思います。ファッションの世界に入ってからも、もちろん活きていると思いますし、ファッション関係なく、何をやる上でもあった方が結果出しやすいんじゃないかなと思います。